Japonism-what to see in The Courtauld Gallery コートールドギャラリーに見るジャポニズムの影響
コートールドギャラリー
テムズ川に面し、450年以上の歴史を持つサマセットハウスの中に位置するコートールドギャラリー。実業家サミュエル·コートールドが収集した美術コレクションを元に、1932年にオープンしたこのギャラリーは、多くの観光客で賑わうナショナル·ギャラリーやテート·モダンほどの規模ではないものの、人も少なめでゆっくりと自分のペースでまわれるのでおすすめです。
2018年からの改装工事のために3年間閉鎖。翌年、コレクションが日本へ出張、「コートールド美術館展·魅惑の印象派」として東京美術館で公開されたのも記憶に新しいですね。
多くの人がどこかで見たことのあるコレクションばかり、特に印象派と後期印象派の作品は見応えがあります。
名画鑑賞後にはサマセットハウス内のレストラン「SPRING」で食事。ミシュランシェフのレストランですが、ランチタイムのコースメニューはお手頃価格で絶品料理が食べられます。(平日月曜以外)
ジャポニズムの幕開け
絵を眺めていてなんとなく懐かしい感じがするのは、日本の原風景に似たものや、浮世絵らしきもの、何処となく日本を思わせるものが多いから?
印象派の時代は、日本の開国とともに日本文化が海外へと紹介され、ヨーロッパ全土に日本ブームが到来したまさにその時。日本が参加した第2回パリ万国博覧会では、浮世絵や陶磁器が出品され、当時の画家たちにも大きな衝撃を与えました。画家たちは収集した浮世絵や着物などをもチーフとして絵画に登場させ、やがて浮世絵の斬新な構図や色彩、動植物のモチーフなどの手法を研究し、自分たちの作品に取り入れるようになったのです。
ここに、日本美術を探求し西洋美術に新しい試みを取り入れる「ジャポニズム」が誕生しました。
日本に影響を受けた巨匠たちの作品を実際にいくつか見てみましょう。
サン・ヴィクトワール山
印象派の技法に不満を感じ、故郷で繰り返し描いた題材。私生活では47歳になってようやく結婚。このコートールドのものはその翌年に描かれたもの。山の形から近景の木、川の流れまで構図が北斎のものとそっくり。大きく広がった松の木はやはり日本を思わせます。
上は言わずと知れた北斎の冨嶽三十六景、「駿州片倉茶園ノ不二」。
下はアメリカ、ワシントンのフィリップスコレクション所有のもの。この二つは構図といい酷似してますね。
Pot of Flowers and Fruit
セザンヌと言ば、静物画のイメージが強く、「近代絵画の父」とも言われるが、そこまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。絵も売れず、批評家や仲間からも嘲笑される日々。それでも印象派のものの形を明確に描かない表現を嫌い、自身の信念を貫き、ひたすら描き続けたのがセザンヌの辛抱強いとことろ。
56歳で個展を開くと、ようやく評価が一転。物事を多角的に見てキャンパスに取り入れるその画法には、ピカソを含むその後の画家たちに多大な影響を及ぼしました。
「自然を円筒、円錐、球として扱う」というセザンヌの概念は、後のビカソの「キュビズム」にも多大な影響を与えました。時代に先駆けて、一つのオブジェクトを様々な角度から見て捉える視点を持っていたのですね!
Self-Portrait with Bandaged Ear 〜自画像〜
画家仲間で友人であったゴーギャンと激しい口論の末、ゴッホは自身の耳をナイフで切り付け大怪我負いました。これはその後、ゴッホが病院を出て1週間後に描いた自画像。実際に怪我をしたのは左耳でも、鏡を見ながら描いたため、ここでは右耳に包帯が巻かれています。
背後の浮世絵はゴッホの個人所有。早くから兄の才能を見抜き、協力的で生涯の友でもあり、画商だった弟のテオが購入にも携わってます。ゴッホは日本絵画に最も影響を受けた巨匠のうちのひとり。日本には実際に行った事はなくとも、憧れ続けました。
ここでは彼の大好きだった黄色を背景に、際立った配色の浮世絵とイーゼルが描かれ、ゴッホの画家としての強い意志を象徴しているかのようです。
Antibes 〜アンティーブ〜